物語
働きながら何度も教員試験を受け、やっと合格した元(はじめ)は、大きな希望を胸に山口県の小学校に赴任する。しかし現実は厳しく、戸惑うばかりだった。中でも気になるのがクラスの女生徒、比加里。東京から引っ越してきたという比加里は他の生徒と親しむこともなく、いつもひとりポツンといて、体育の授業にも参加しようとしない。見かねた元はなんとか比加里をクラスの輪に引き入れようとするが、かえって泣かれてしまう。そんな元に保険医の七海は焦らないようにと諭す。「家庭が複雑な子じゃからね。心の病が一番、面倒なんよ」。比加里は母を癌で亡くし父に育てられていたのだが、酔った父にたびたび手を上げられ、見かねた親戚に引きとられていたのだ。それを知って元は自身の子ども時代を思い出す。父が事業に失敗し、母に捨てられた元だったが、当時の担任だった瀧口先生のおかげで自分を見失わずに済み、教師になることを決心したのだった。
ある日、元は課外授業で川を見ながらふと「こんなところにほたるが飛んだら、きれいだろうな…」とつぶやいた。その言葉をきっかけに、元と生徒たちはほたるの飼育を始める。だが、川では護岸工事が始まり…。