物語
女は両腕を失い、姉の介護のもとで暮らしている。男は両腕を骨折中の便利屋、金額とスケジュールが折り合えば、どんな仕事も引き受けるのが信条だ。
そして雨の日に女は男を訪れる。心中を依頼するために‥‥。
「死ななくちゃいけない理由」を説明するのは難しいが、「生きてないといけない理由」を探すよりは易しいこと。腕を使えない二人はぎこちなく愛しあい、やがて希望が芽生え始めたとき、世界に異変が起こった。二人の視覚と聴覚が
緩やかに失われていく。女はそっと囁く、「もう一日だけ生きてみようか」。