物語
阿部は30歳を目前にして悩んでいた。行き場を失った人間達相手に高利貸しを営む、エキセントリックで金への執着の強いボス石井の下で働き、暴力でしか物事を解決できない自分の姿に嫌気がさしていた。そんな彼の心の拠り所は日課である神社参拝と
無表情で街角でチラシを配る少女・アヤを遠く車の中から眺めることだった。マウンテンバイクでやって来ては、チラシを配り、ファーストフードで食事をして去っていく。阿部の目からは社会との接触を断っているように見えるアヤと触れ合うことで、自分の存在意義を見出せると信じる阿部だが、実際は5メートルも近づけない。
取りたて稼業もうまくいかない阿部に石井は容赦無く制裁を加える。阿部は受けた痛みを石井の債務者で売春婦のユミへの異常な行動で発散させていた。
その頃、石井の愛人・マリは石井の事務所の金庫から金を盗んで姿をくらました。
ユミも阿部の行為が阿部自身を肯定することに利用されていることを感じ、売春婦を辞め街を去る。マリが金を盗んだことを知った石井は手下どもにマリを探しだすよう命じた。もちろん阿部にも。しかし阿部はマリを探そうとせず、借金の取りたてで追い回していた連中を訪ね、あることを依頼する。